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執筆者の写真田中佳奈

踊り下駄と郡上おどり REPORT vol.10



今年度の郡上藩江戸蔵屋敷がついに開幕しました!vol.10のテーマは「郡上おどりと踊り下駄」。郡上藩江戸蔵屋敷の中でも特に人気があり、どの会よりも早く満席になる鼻緒すげワークショップの講座。今回も例外ではありませんでした。


会場は昨年と同じ青山1丁目にあるGlocal Cafe 南青山。郡上おどりにまつわる物品をそこらかしこに展示し、会場はすっかり郡上色に。皆さまに選んでいただく鼻緒も、郡上の地場産業や伝統工芸に作られたものを筆頭に100種類以上、と昨年よりもバリエーションが増え、天井から吊るされた竹竿に見事に飾られています。



そのお隣には、郡上でかつて使われていた多様な下駄を展示しました。トイレに行くための専用も下駄や神事に使われる下駄、田植えに使う下駄・・・と全て見たことありますか?


「何に使うものか検討がつきませんでしたが、こんなに用途ごとにカタチが違うのは面白いですね!」と、多くの関心を集めていました。






◉ 蔵開き

今年度初めての蔵開きは「縁起良く始めよう!」とのことで、時間になったところで突如唄が始まり、司会の井上さんが現れました!




井上さんが唄ったのは『古調かわさき』。郡上おどりの曲目の開始を告げる曲で、会場でも知っている方が半分以上。歌声に合わせて口ずさんだり、返しをしてくださったおかげで場の熱が急上昇。この流れで、井上さんの講義がスタートです。



◉ なぜ他の盆踊りは雪駄なのに、郡上おどりは下駄なのか?


世の中には様々な下駄がありますが、皆さまはどれくらいの種類の下駄をご存知ですか?



「こちらは農作業にに使っていた、田下駄です。水が引かれた田んぼで足を取られないようにするため、地面への接地面がとても大きくつくられています。」




そういって、田下駄を掲げる井上さん。では、「踊り下駄」はご存知ですか?どのような特徴があるのか見ていきましょう!


「郡上の踊りは、下駄がなることが大事なんですよ。」

日本中の盆踊りの中でも、下駄をならして踊るものはないそうです。けれど、郡上おどりはそここそが肝になります。


今多くの方々で賑わう郡上おどりは、いわゆる町の路地や通りで踊られていますが、その歴史を遡ると、その源流はお宮の拝殿にあることがわかります。会場には、「拝殿おどり」の映像が流されました。




郡上おどりの源流は、拝殿踊り。元々は、盆踊りというのは神さまや仏さまに許された場所でしか踊れなかったといわれています。郡上にはお山の信仰があるので各地に白山神社やお宮があって、そこの境内に人が祈る場所として高床式の拝殿が建てられています。


つまり、郡上おどりは元は板場で踊る踊りだったのです。板場で下駄を鳴らすことで、白山の神様をおろす。そこが、郡上おどりの源流なんです。

下駄の鳴らし方にも色々あり、例えば足を止める動き、下駄を蹴飛ばす動き、下駄の裏を見せる動き、下駄を使ったいろんな見せ方が郡上踊りでは発展してきました。


当然、良くなる下駄じゃとないとダメだという人が出てきます。そこで、踊り下駄を専門に作る職人が出てきました。一般的に日常的な履物としての下駄作りと、おどり下駄はちょっと違うぞってことです。
というわけで、今日みなさんに作っていただくのは、ただの下駄ではございません。もちろん、“踊り下駄”を作っていただきます!それでは、郡上の踊り下駄職人、諸橋さんをお迎えします。


諸橋有斗さんは、愛知県尾張旭市のご出身。岐阜県立森林文化アカデミーで木工を専攻し、卒業後は郡上に移住されました。


日本有数の踊りの中でも、下駄の音を鳴らすという特徴があるのが郡上おどり。そこで確立されたのが「踊り下駄」というジャンルです。かつては郡上でも職人さんたちによって連日、下駄づくりが行われていましたが、時代とともに衰退し。諸橋さんが郡上にこられた頃には誰一人として踊り下駄をつくる人がいなかったそうです。


全国に名を知れる郡上踊り、それに欠かせない下駄は郡上で、郡上の木材を使って作れないものか?そんな思いで、2014年に「郡上木履」を立ち上げられ、現在は郡上唯一の下駄職人として活躍されています。


今回は、下駄づくりの現場を見せようと、郡上木履の工房の動画をつくってきました!



もうお分かりいただけているかと思いますが、踊り下駄に一番求められるのは、音の良さです。それに加え、下駄を鳴らす動きは下駄をすり減らすことにもつながるので、少しでも長い期間履けるようにするための工夫も必要でした。そこで、諸橋さんが選んだのはより丈夫で、綺麗な音が出るヒノキ材でした。一般的には、キリやスギ材の下駄が普及していますが、それらは軽い分減りも早いのです。



諸橋さんが工夫されたことはまだ、あります。次は、材の切り出し方です。

郡上木履の下駄は9割が板目、つまり山のような模様ができる切り出し方をされているとのこと。これは、平行な線があるものが美しいとされる下駄業界とは逆の方針です。その理由をこのように説明されました。




「木は原則として、芯に近いほど硬くて丈夫です。柾目は芯を通るように切り出すので、左右で木の硬さに差が出てしまい、欠けやすくなるのです。その点、板目で切り出すと、硬さが左右均等ですので、一方だけ欠けやすいということがなくなります。


他にも、下駄の裏には硬い面が、足の裏に当たる面は柔らかく気持ちのいい面が当たる。そんな細かな配慮がなされているのです。このような郡上おどりに特化した踊り下駄は大きな話題となり、毎年下駄を身長しにくるリピーターも少なくないといいます。



◉ 世界に一つだけの下駄づくり 鼻緒すげワークショップ


座学で踊り下駄のポイントをつかみ、これからつくるオリジナルの下駄づくりに期待が高まっているのが会場の熱気で伝わってきます。次はいよいよ、鼻緒すげワークショップ。素敵な鼻緒を選ぶ時間がやってまいりました!それでは、100種類以上もある鼻緒からお好きなものを選んできてください!





「どれもこれも魅力的すぎて、あ〜どうしよう」





それもそのはず。郡上木履さんは、各地の職人さんやデザイナーさんとコラボレーションをし、昨年よりもさらにバリエーションの豊富な鼻緒をご用意してこられているのですから・・・ひとつだけなんて酷ですよね。


色々と目移りしながらも、全員無事に鼻緒をお選びいただけたようです。皆が席についたところで、諸橋さんの奥様のなつきさんにも合流いただき、グループごとに鼻緒づけの指導が始まりました。




手慣れた人だとものの10分でできることを、この日は1時間の時間をかけてゆっくり取り組みます。

「鼻緒をさしたら踵側を自分に向けるようにして待っててください」



「板と鼻緒の間をみてくださいね。」



「ここを持って、これ以上引っ張れないというところまで引いてください」



「これからは細かい作業なので、手元がしっかり見えるようにしてください」


自分の足にぴったりの下駄を履けるよう、細かい調整もできるようになりました。




あと少しです。割り箸、ピンセットを駆使し、金色の留め具を釘打ちしたら完成です。




完成!



しかし、本日のお楽しみは、実はここからだったりして?!今回は特別に、下駄に思い思いの絵を焼き付ける「ウッドバーニング」の企画をご準備しています。どんな柄にしょうかと、それぞれの手元には様々なアイディアが描かれました。




こちらは、大好きな猫ちゃんキャラを。初めてとは思えないほどスムーズに描かれていますね。



名前の漢字!印鑑がわりの下駄になるかも!?


お持ちの手ぬぐいと柄を合わせるのもおしゃれですね。


ウッドバーニングで世界に一つだけの下駄が続々完成です。



皆さんの個性あふれる、とても素敵な下駄が仕上がりました。これで今年の夏も元気に踊れますね。




◉ 郡上のホットな情報コーナー


休憩を挟み、質問コーナーがスタートしました。




「もし、会場で鼻緒が切れてしまったらどうしたらいいですか?」「郡上では宿が取れますか?」それぞれ、講師やスタッフがお答えし、諸橋さんからは、応急的な鼻緒の直し方も伝授いただきました。




踊り会場で万が一のことがあれば是非、思い出して直してみてくださいね。この技をしっているときっと助かる人がいるはずです!



ここで、2人目の講師、興善健太さんに登壇いただきます。



興膳さんは、2007年に郡上に移住。大学時代に福岡大学から岐阜大学地域科学部に編入し、まちづくり活動について勉強していたときに郡上市を知ったのがきっかけでした。自然体験活動を行うNPO法人メタセコイアの森の仲間たちの代表を経て、現在郡上里山株式会社の代表取締役を担っておられます。





今日はそんな興善さんから、郡上で暮らす魅力を語ってもらいました。彼が立ち上げた「猪鹿庁」という里山保全組織や郡上の人と都市部の人が事業を共創していく「郡上カンパニー」など、現在の郡上で立ち上がっているさまざまなプロジェクトをご紹介いただき、郡上では今どんな取り組みがあり、どんなプレーヤーが集まってきているのかという、郡上の横のひろがりを感じていただけたのではないかと思います。






◉終わりに


これにて本日の蔵開きは終了です!同じテーブルで作業した人たちを写真を取り合ったり、江戸蔵土産の残りを分け合ったり、講座が終わってからもワイワイ、ガヤガヤと参加者の方々でお話しが続いていました。




しかし、今日はこの後「郡上踊りin青山」が控えています!参加される方は急いで!スタッフも大急ぎで片付けをして会場に向かいました。





会場でその日作ったばかりの下駄で踊る参加者の姿をみられて、スタッフみんな誇らしい気持ちになったことは言わずもがな。郡上の森からきた下駄を、どうぞ大切に、そして楽しく使ってあげてくださいね。

ご参加ありがとうございました!

夏に郡上おどりで再会できることを楽しみにしております!

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